2018年4月5日木曜日

ホームレスドライバー

2週間ほど家族旅行に出かけ投稿がかなり久しぶりになってしまった。

行き先はカリフォルニアとテキサス。デビ男のコンサートがいくつか入っていたので、仕事とバケーションを兼ねての旅行となった。

まず初日は空港までタクシーで。ポートランドのタクシードライバーはだいたいいつも愛想が良くて親切。スーツケースなどの荷物も率先して出し入れしてくれる。今回のドライバーも気さくな人で、タクシーにポーのチャイルドシートを設置するのも手伝ってくれてすべてがスムーズに行った。

助手席に座ったデビ男との会話を聞いて、タクシー業界が最近かなりシビアになっているのがよく伝わった。原因はUber人気だ。Uberとは宇部に住んでいる人の総称。ではなくて、自家用車をタクシー代わりにして人々を送迎するシステムで、アメリカで2009年に経営が開始してから瞬く間に全米に浸透し、今では世界でも広がりを見せている。読み方はウーバー。日本でも名前を聞いたことがある人はいるだろう。Uberのアプリをスマホにダウンロードしておけば、簡単にリクエストして、タクシーより安価で目的地へ運転してもらえる。例えば、我が家から空港までだいたいタクシーで50ドルくらいなのだが、Uberだと半分で済む。運賃や到着時間もスマホに表示されるので、目的地に着くまでハラハラせずに済むし、ぼったくりの心配もない。また運転する側にとっても、自分の車で空いた時間に誰かを送迎することでちょっとしたお小遣いを稼げるという利点がある。

ただこれはタクシー業界にとっては大きな痛手となり、反発を呼んでいる。2月にはニューヨークのタクシードライバーがマンハッタン 市役所の前で自殺したというニュースを聞いた。彼はタクシードライバーとして生活するために週に100時間勤務しなければならなかったそうだ。

ポートランドのような若者が多い街では特にUberは大人気だ。我が家はまだUberを利用したことないのだが、こうした背景を理由にデビ男はUberはこれからも絶対に使わないと言っている。Uberのことを初めて聞いたときは、デビ男もツアーがないときにこれでお小遣い稼ぎをしようかな、と真面目に話していて、私もなんていい案なんだ✨と思っていたが、どうやらおじゃんになったらしい。

と、カリフォルニア&テキサス旅行を終えて(旅行の話はまた別の投稿で)、今度は空港からタクシーで我が家に帰るときの話。

空港から出て、タクシー乗り場へと移動すると、タクシーを待っている人ではなくタクシーが長蛇の列を成していた。タクシーに乗ろうとする人は私たち以外には見当たらない。普通サイズのタクシーか、それともバンのようなタクシーどちらがいいかと質問して誘導する空港の職員もいたが、相当暇なのだろう。最初にたどり着いたデビ男の顔を見てニコニコだった。一歩遅れて到着した私は別の客だと思ったのか、私にも「普通タクシーですかバンですか?」と聞いてきたので、「あの人と一緒に乗ります」と答えたら、いかにも残念という顔をされた。

で、誘導されたタクシーは当然列の先頭のタクシーなのだが、一目で私は「乗りたくない!」と思った。

最近のタクシーはみんな綺麗でいい車がほとんどなのだが、私たちが割り当てられたタクシーに限ってポンコツ車。出てきたドライバーはタバコ臭く、髪はボサボサ、身なりもかなり汚い。その後ろのタクシーはプリウス。その後ろも。どれも綺麗なタクシーばかり。なんでよりによって私たちはこれなんだよ。

シートベルトのバックルが見当たらず、私がチャイルドシートの設置に手間取っていると「バックルはシートの下に隠れているよ」、といって運ちゃんがシートを引っ張ったらシートが丸ごと外れたのでびっくりした。バックルは確かに隠れていた。しかし大丈夫かよ、ほんとに。

見ると車内もぐちゃぐちゃ。ゴミが散乱しているし、なぜかダンボール 紙がたくさんある。

助手席のデビ男が目的地を伝えると、「あまりポートランドに詳しくないんだよ」というので、デビ男が行き方を説明した。

走り出すと、デビ男が「この業界でなんとかやっている?」と聞いた。

「いや、とっても厳しいよ。なんせ自分はホームレスなんだ。」

つまり、このタクシー内で寝泊まりしているということか。ダンボールは寝るときに窓を遮光するためのなのだろう。

この運ちゃんは道中ずっとお喋りをしていた。元はレースカーのドライバーだったとか、自分は親に全く似ていなくて、産院で取り違えられたに違いないのでDNAテストをしたいとか、スピード違反取締りの警察が、長距離から低周波のレーザーを自分に当てようとしたとか。かなり変わっているけど、フレンドリーさは伝わってきた。

私はとにかく無事故で我が家に着いてくれればそれでよいとそれだけ願っていた。

運賃もどういうシステムなのかいつもより10ドルくらい高かったが、無事だったからよしとしよう。荷物の出し入れも手伝ってくれたし。"I hope I'll see you guys again!"と言ってその運ちゃんはご機嫌で去っていった。次のお客もさぞ度肝を抜かれることだろう。

それにしてもポートランドに住んでいると、予期せぬ出来事があるものだ。





1 件のコメント:

Snow さんのコメント...

無事で何より。日本でタクシードライバーがホームレスの方というのはかなり低い確率かも。運転免許をとるための学校への入学料も高いしね。
長旅お疲れ様。子どもの運転が一番信用がおける(動かないから)かも。